『成瀬は天下を取りに行く』を読んで感じた“真っすぐな強さ”

読書
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本屋でふと目に留まり、前々から気になっていた 『成瀬は天下を取りに行く』。この作品は2024年の本屋大賞を受賞したことで話題になっていたため、ちょうど文庫化されたタイミングで購入し、通勤時間に読み進めてみることにしました。タイトルからは一見「戦国時代の物語?」と想像してしまいますが、表紙には現代の女子高生が描かれており、どんな内容なのか掴みきれないままページを開きました。しかし読み始めると、その印象は一気に覆されました。主人公・成瀬あかりの持つ圧倒的な行動力と“自分の信じる道を生きる姿勢”が胸に刺さり、読後には不思議な勇気が湧き上がる作品でした。

舞台は滋賀県。日常の風景が魅力を帯びる

物語の舞台は滋賀県。私自身はこれまであまり馴染みのない土地でしたが、作品に登場する地名や景色の描写が生き生きとしており、読みながら「いつか訪れてみたい」と感じるほど魅力的でした。特に、琵琶湖をゆったりと進む遊覧船のシーンは心に残り、実際に乗船してみたくなるほど。小説を通じて「知らない土地が身近に感じられる体験」ができるのも、この作品の大きな魅力だと思います。

成瀬あかりの“自分を貫く姿”が心に突き刺さる

本作の核となるのは、主人公・成瀬あかりの独特な存在感です。周囲から見ると「変わっている」「天然」と映ることもある彼女。しかし本人はそんな評価を一切気にする素振りを見せません。
「周りがどう思うか」ではなく、「自分がどう生きたいか」
その姿勢を貫いているのが成瀬あかりという人物です。

言葉にすると簡単に聞こえますが、実際には誰しもが“他人の目”から自由でいることは難しいものです。それを当たり前のように実践する成瀬の生き方は、ときに痛快で、ときに心を揺さぶります。彼女の行動力は破天荒でありながら、不思議と説得力があり、読むほどに惹かれていきました。

心を捉えた一文

作中で特に胸に刻まれたのが、236ページの以下の言葉です。

「たくさん種をまいて、ひとつでも花が咲けばいい。花が咲かなかったとしても、挑戦した経験は全て肥やしになる」

この一文は、年齢や立場を問わず、多くの人の背中をそっと押してくれる力を持っていると思います。挑戦した結果がすぐに実を結ばなくても、挑戦そのものが自分の成長になる─そんな当たり前だけど忘れがちな真理を、成瀬のまっすぐな生き方を通じて気づかせてくれました。

青春小説としても、大人にも響く作品

『成瀬は天下を取りに行く』は青春小説としての魅力も強く、特に中高生・大学生にはぜひ読んでほしい作品です。自己肯定感が揺れ動きやすく、周囲の目が気になってしまう年代こそ、成瀬あかりの言葉や行動が力強く響くはずです。

ただし、社会人である私にも強く刺さるものがありました。むしろ大人こそ、日常の忙しさに流され“自分の軸”を失いかけてしまうタイミングがあるからこそ、成瀬の言葉が沁みます。「もっと自由に生きていい」「やりたいことをやっていい」と、読後にそっと背中を押してもらえる作品でした。

読書の時間を取り戻す贅沢

最近は仕事や生活の慌ただしさに追われ、なかなか読書の時間を確保できていませんでした。しかし、本作を読むことで久しぶりに“本の世界に没頭する感覚”を取り戻すことができました。読書とは、読み終えた後に自分の中で感情や考えを整理し、気づきを得る貴重な時間だと再認識しました。

本を読むだけでなく、こうして感じたことを文字としてまとめることで、作品の余韻がより深まり、自分自身の価値観にも変化が生まれるのだと思います。

続編への期待

読み終えた今、続編である 『成瀬は信じた道を行く』 もぜひ手に取ってみたいと感じています。成瀬あかりが次はどんな行動を起こし、どんな言葉を残してくれるのか─その先の物語も楽しみです。

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